#011 試験勉強を敢えてしないという選択

試験を受ける理由は人それぞれ。でも…?

語学試験を受ける目的は、主に3つに分けられます。

  • 仕事のため(就職・転職、昇進、海外赴任や出張のチャンス)
  • 進学のため(学校や留学プログラムの応募条件)
  • 自分の力を試すため(到達度の確認やモチベーションとして)

このうち、1や2に当てはまる人が試験のために勉強するのは、もちろん自然なことです。
でも、それ以外の人――つまり、仕事で使う予定も、進学の予定もない人が、自己満足や誰かと競うためだけに試験対策に多くの時間を費やしているとしたら?

ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。

試験勉強をしないで受けてみる、という選択肢

語学力を客観的に測る手段として、試験はとても有効です。
健康診断や体力測定のように、スコアを通して自分の状態を把握できます。

でも、試験対策をしすぎると、本来の語学力とは別の「試験力」だけが伸びてしまうこともあります。
器用な人ほど、出題傾向や形式に慣れることで、実際の運用力以上のスコアが出てしまうことがあるのです。

だからこそ、あえて試験勉強をせずに、今の実力を測るつもりで受けてみるのも一つの方法です。
ただ、試験形式が全くわからないと、試験中にそれを理解するのに多少時間がかかってしまいます。
形式に慣れるために過去問をやってみるのは1つの方法かと思います。

語学試験の本来の目的を、忘れないでほしい

語学試験の目的は、本来、語学の「運用力」を証明することのはずです。
でも、試験の点数だけが高くても、英語の本が読めない、英語でまともなレポートが書けない、英語で意見を述べたり説明したりできない――そんな状態であれば、それは本末転倒です。

語学の「運用力」とは:

  • 日常生活や仕事、学校で必要な情報を読める(リーディング力)
  • 自分の考えや事情を書ける(ライティング力)
  • 会話や講義の内容を耳で理解できる(リスニング力)
  • 自分の言葉で意見や説明を口頭で伝えられる(スピーキング力)

この4技能をバランスよく使えるかどうかが、本来の語学力です。
だからこそ、まず自分に問いかけてみてください。

「私は、英語を“使える”と胸を張って言えるだろうか?」

選択問題や穴埋めに慣れすぎてしまうと、こうした問いからどんどん遠ざかってしまいます。
語学力そのものが目的だったはずなのに、いつの間にか試験のためだけに英語をやっている。
そんなすり替えが、起きてしまっていないでしょうか?

試験が“語学そのもの”から遠ざけてしまうこともある

私は以前から、試験に対して少し違和感を持っていました。

TOEICの試験中、自分とまったく関係のないミーティングの内容を聞かされ、他人のビジネスメールを読まされながら、「私は今、何をやらされてるんだろう…?」と不思議な気持ちになることもありました。

社会問題について自分の意見を書くような設問なら、私はまだ楽しめます。
でも、“試験用の英語”は、語学の面白さからかけ離れていると感じることが多かったのです。

もちろん、試験そのものが悪いわけではありません。
日本では語学力そのものより、証明としてのスコアの方が重視される場面も多いからです。
ただ、それでもやはり、語学力よりも試験対策が優先されてしまうのは、もったいないと思うのです。

語学が好きになりかけていた人が、試験で消耗してしまう。
本当の英語力を育てる前に、テクニックばかりを追いかけてしまう。
そんなことが起きてしまっては、残念ですよね。

試験は“目的”ではなく“副産物”であってほしい

私が思う理想はこうです。
「英語が使えるようになりたい」という気持ちで取り組んだ結果、試験でも良いスコアが出た。
それなら、スコアと実力が一致していて、何の問題もありません。

でも、スコアだけが先にあって、そこに英語力が追いついていないのなら、バランスが崩れてしまいます。
試験勉強に疲れてしまった人、試験の点数ばかり気になるようになってしまった人は、一度立ち止まって、ご自分の英語そのものを見直してみてほしいと思います。

じゃあ、何をすればいいのか?

「英語を頑張ろう=TOEICを頑張ろう」になってしまっている人は、もしかすると、「じゃあ英語って、どう勉強すればいいの?」と迷ってしまうのかもしれません。

今後の記事で、具体的な学習の方法をご提案します。
英語力そのものを育てるために、試験以外に何があるのでしょうか?

次回「#012 英語力の差が、日常ににじみ出るとき 」では、日常生活の中で、あなたの教養をこっそり測っている英語的要素について書いています。
英語で文を書かないから、英語の知識がなくても大丈夫?
実は、そんなことないんです。

おすすめの記事