
「勉強が苦手」だけでは片付けられない障壁
すでにお伝えしたとおり、英語を本当に使いこなすには、「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバランスよく伸ばす必要があります。
そして、以前の記事「 #009 勉強が苦手ならば、どうすればいい? 」では、勉強が苦手だった人への対策もお話ししました。
でも実は、そうした「勉強が苦手」だけでは片づけられない、もう少し深いところにある“壁”が存在するのです。
学習能力による困難
たとえば、「ディスレクシア(読み書き障害)」のように、明確な困難を抱えている人もいます。
これは診断がつくこともありますし、子どもの頃から読み書きに強いストレスを感じていた場合には、比較的早く気づくかもしれません。
一方で、「機能的非識字(functional illiteracy)」のように、日常生活には困らないけれど、文章を正確に読んだり書いたりする時に、間違いがあるのに自分で気づけない人もいます。
こうしたケースでは、文法や単語のパターンがなかなか定着せず、何度繰り返しても覚えられなかったり、同じ間違いを繰り返したりすることがあります。
これは、言語のルールや構造を理解して再現する力が弱いためであり、自分でも「なぜできないのかわからない」と戸惑うことが少なくありません。
その場合、たとえばTOEICのリーディングだけがどうしても伸びない、といった状況になることもあるでしょう。
そうした壁に苦しんでいる方も、きっといらっしゃるはずです。
今は音声を活用した学習補助など、さまざまな対策方法も出てきています。
4技能をそのままの形で伸ばすのが難しい場合も、代替的なアプローチがありますので、あきらめずに自分に合ったやり方をぜひ探してみてください。
ブランクによる“思考の鈍さ”を誤解しないで
ただ、それとは別に、私が強く伝えたいのは、「学びのブランク」があった人は、誰でも最初は頭がうまく働かなくて当たり前だということです。
私自身も何度かブランクを挟んで勉強を再開したことがありますが、そのときの「思考の鈍さ」「集中力の無さ」「理解の遅さ」には、正直、絶望すら感じました。
でも、これは能力自体の問題ではありません。
ブランクによって、一時的に「学ぶ頭」から離れてしまっているだけなのです。
誰でも理想と現実の落差が激しいほど、自分の限界をすぐに能力のせいにしてしまいがちです。
私もこれまでのブランクの後は、ゼロからのスタートとは違って「これまでの蓄積があるはずだ」という気持ちがある分、フラストレーションが強くなりやすく、自分の能力を疑い出すという始末でした。
でも、英語でつまずいたとき、それを「自分には無理なんだ」「以前より歳を取ったからもうできないんだ」と思い込んでしまうのは、とてももったいないことです。
実際には、「慣れていないだけ」だったり、「やり方が合っていないだけ」だったりするケースも多いのです。
あせらず、ゆっくりとリハビリをするような気持ちで、自分に期待しすぎず、「絶望しない・トラウマにしない」という姿勢を持って取り組んでください。
苦手意識という、もう一つの壁
そしてもうひとつ、大きな障害になるのが、「苦手意識」そのものです。
英語に限らず、「自分にはできない」「昔から苦手だった」と少しでも思い込んでいることに、挑戦するのは勇気がいります。
でも、それは単にこれまでの環境が合わなかっただけだったり、過去の失敗がトラウマになっているだけかもしれません。
しかも「苦手意識」は、それだけで脳の働きを鈍らせてしまいます。
(「自分は得意」だと思っていることに取り組む時と真逆と考えてみてください。)
まずは「できないこと」そのものを責めず、自分の中にある思い込みに気づくところから始めてみてください。
そして、意図的に小さい成功体験を積み重ねてみましょう!
「壁」を認識し、それに合った対策を
今回は「勉強が苦手」よりも少し深いところにある「壁」について、お話ししました。
- 学習能力における困難
- ブランクによる思考の鈍さ
- そもそもの苦手意識
英語を学ぶうえで立ちはだかるこれらの「壁」は、単なる努力不足ではありません。
自分に合った学び方を模索し、正しく対処していくことが、長く学びを続けていくためにとても大切です。
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