#014 旅行で英単語すらわからないのはなぜ?

英語が通じず悔しかった——その気持ちを出発点に

海外旅行で英語が通じなくて、悔しい思いをしたことはありませんか?
私は何度もあります……。

英語を学び始めの頃、とにかく入国審査が不安でした。
並んでいる間に、聞かれそうな質問への答えを、準備してそらんじていました。

いよいよ自分の番。気さくな感じの男性入国審査官がすぐに質問してきましたが……全く聞き取れない。
とにかく何か答えなきゃと焦って、口から出たのが「Sightseeing.」

入国審査官は急に笑って、質問を繰り返してきます。
好意で言い換えてくれてるのですが、それがまた聞き取れない。
焦って言葉も出ず、表情で聞き返す私。

数回やり取りしたあと、ようやく「オキュペーション」という単語が頭の中に浮かびました。
Occupationーー職業。
私の職業は観光……。

Occupationという、知っていた単語。しかも、入国審査に備えて予習していた言葉なのに、実際の場面では聞き取れなかった。
呆然としながら、入国審査を終えました。

旅行英語の現実

そもそも発音が違う

それまで英語も勉強していたし、何より準備もしていたのに、結果はボロボロ。
単語を知っていれば聞き取れると思っていたけど、全然そんなことはありませんでした。

自分の頭の中にあった「オキュペーション」と、実際の”occupation”には、スピードだけでなく発音の違いもありました。
頭の中のカタカナ英語と、現実の英語がつながらない。

でも当時は、それがなぜなのか全くわかっていませんでした。

今になって思えば、カタカナのイメージでネイティブの発音が聞き取れるわけがありません。
発音記号で書いてみたら、それはもう明らか。全く別物です。

それをネイティブのスピードで聞いて、カタカナとの違いを補って理解するなんて……そんな高等技術、初心者には無理がありますよね。

フレーズを覚えたのに、想定通りにいかないのはなぜ?

旅行フレーズを必死に暗記したのに、相手がちょっと違う言い方をしただけで、急に分からなくなるのはなぜなのでしょうか?

これは英語に限らず、言語には多様な言い回しがあるからです。
母語だったとしても、会話が自分の想定どおりに進むわけがないことは、容易に想像がつきますよね。

つまり、Yes/No や単語だけで答えられる1往復分のやりとりを越えたとき、突然「通じない」ことになり得るのです。

「お客様」でなければ通じない現実もある

それでも、ホテルや観光地、お土産屋さんで英語が通じる経験は、あると思います。
ホテルのスタッフは問題なく対応してくれますし、お土産屋さんでは日本語を交えて楽しく話しかけてくれることもありますよね。

でもこれは「観光客向けのサービス」の一部。
言い換えれば、「お客様としての特別対応」なんです。
現地の日常的な英語環境とは、まったく別物です。

ローカルなお店では、観光客慣れしていない場合もあり、英語が通じないどころか、歓迎されていないように感じることもあります。

日本でも、外国人観光客には親切な対応が多い一方で、技能実習生や留学生など「お客様」ではない立場には現実的な対応が求められます。
もしあなたが技能実習生だったら、どんな外国語の世界が見えるでしょうか?

つまり、観光客向けの英語環境と、日常生活や仕事で使う英語環境とでは、まるで別世界なのです。

旅行英語と実用英語はまったく別物

日常や仕事で使う実用英語には、曖昧な表現への対応、文脈理解、応用力、瞬発力が求められます。

旅先でのフレーズ集の一歩外に出たとたん、太刀打ちできなくなるのは、ある意味当然。
人によって話し方も語彙も異なり、それを理解するには、語彙力・文法力・発音の理解という土台の上のリスニング力が最低限必要です。

つまり、付け焼き刃ではどうにもならない世界があるのです。

すでに実用英語を学んでいる人には、このようなことは当たり前かもしれませんが、この記事は、当時の私のように、学校以外で初めて外国語に触れた人のお役に立ちたいと思って書いています。

実用英語の入口として、旅行の悔しさを活かす

英語が通じなくて悔しかった——その感情は、学びの原動力になります。

でも、それを「もっとフレーズを覚えなきゃ」で終わらせてしまうのは、少しもったいない。

何が通じなかったのか?
なぜうまく返せなかったのか?
どうすれば、同じ状況で違う対応ができたのか?

そうやって振り返ることこそが、実用英語の第一歩です。
旅行英語をきっかけに、ぜひ実用英語の世界にも目を向けてみてください。

悔しさを、前に進むエネルギーに変えていけますように。

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