#019 英語力のゴールは点数じゃないーーCEFRで「できる自分」を目指そう

「できること」ベースの指標 CEFR

「TOEICで◯○点取りたい」「英検1級を取りたい」
もちろん、数値目標があるのは大切です。

でも、その点数を取ってどうしたいのか?
「英語で具体的に何ができるようになりたいのか?」がはっきりしないままでは、学習の方向性がぼやけてしまいます。
それは留学などの目的ではなく、日常などの具体的な場面で何ができるかということです。

そこで今回は、「できること」ベースで英語力を考える指標、CEFR(セファール、シーイーエフアール)をご紹介します。
CEFRは、Common European Framework of Reference for Languagesの省略形で、ヨーロッパを中心に国際的に使われている言語能力の共通基準「ヨーロッパ言語共通参照枠」のことです。

リンク先を見ていただくと分かるように、この内容は簡単に説明できるような量ではありません。
なので、ここではキングズ・カレッジ・ロンドン(King’s College London)からの情報をもとに、簡略した形でまとめてみます。

「できること」でレベルが決まる

CEFRは、旧体系ではA1からC2まで6段階のレベルに分かれています。
新体系ではもっと細かく分かれているのですが、現時点でTOEICや英検では旧体系の6段階に対応する形になっています。

CEFRの特徴は、単に「正答率」や「語彙数」ではなく、「何ができるか」を基準にしている点です。
たとえば、B1(中級)レベルでは「旅行中に必要なやりとりができる」とされ、C1(上級)では「社会的・学術的な文脈でも柔軟に対応できる」とされています。

英語試験のスコアとCEFRの対応関係

TOEICや英検などの各試験では、CEFRとの対照表を出しています。

たとえばTOEICとの対照表によると、L275以上、R275点以上でB1相当、L490点以上、R455点以上がC1相当です。

英検では、ユニバーサルなスコア尺度である英検CSEスコアを元にして、CEFRレベルを算出する形を取っています。

4技能それぞれのスコアの基準値と4技能総合スコアの基準値を満たすと、それに応じたCEFRレベルが算出される仕組みです。

「話せるようになりたい」なら、どのレベル?

「英語を話せるようになりたい」と言うとき、多くの人はB1〜B2あたりを目指すとよいでしょう。
B1で「日常や旅行の場面に対応できる」、B2で「幅広い話題を扱える」といった感じです。
もし仕事で使う、海外とやり取りする、となると、C1以上が望ましいこともあります。

私は長らく英語から離れていましたので、実は私も最初はCEFRという言葉さえ知りませんでした。
私のCEFRレベルは、留学後に取得したスコアですと、L&RがB2、S&WがC1ということのようです。
これは私にとって非常に良い目安で、私はB2とC1の境界線上にいるんだなという認識になりました。

私は、C1の目安にあるように、「社会的・学術的な文脈でも柔軟に対応できる」ようになりたいので、単にC1相当のスコアを狙うのではなくて、4技能のどれにおいてもこのような基準でC1レベルを目指そうと思いました。
CEFRは、このように、試験偏重にならない目標を定めるのに、非常に良い参考になります。

レベル別「できること」

以下は、CEFRの各レベルにおける「できること」の一部です。
自分の英語力がどのあたりか、目指したいのはどのレベルか、確認してみてください。

CEFRレベル 入門(Beginner) / A1

リスニング ゆっくりで明瞭な話し方であれば、自己紹介や家族、身の回りの基本的な語彙を理解できる
リーディング 看板やポスター、カタログなどにある馴染みのある単語や非常に簡単な文章を理解できる
スピーキング 相手がゆっくり話し、助けてくれる場合、簡単なやり取りができる
ライティング 簡単なメモやメッセージ、個人情報の記入ができる

CEFRレベル 初級(Elementary) / A2

リスニング 日常生活でよく使われる語彙や表現を理解し、短く明瞭なメッセージやアナウンスの要点を把握できる
リーディング 広告、メニュー、時刻表などの日常的な資料から特定の情報を見つけ出せる
スピーキング 簡単で日常的なやり取りができ、短い社会的交流をこなせる
ライティング 短いメモやメッセージ、簡単な個人的な手紙を書くことができる

CEFRレベル 中級(Intermediate) / B1

リスニング 仕事、学校、余暇などで定期的に遭遇する馴染みのある話題について、明瞭で標準的な話し方であれば主な要点を理解できる
リーディング 日常的または仕事関連でよく出てくる語彙を含むテキストを理解し、個人的な手紙での出来事や感情、願望の記述を理解できる
スピーキング 旅行中に起こりうるほとんどの状況に対処でき、馴染みのある話題について即興で会話に参加できる
ライティング 馴染みのある話題について、簡単で順序立った文章を書くことができる

CEFRレベル 中上級(Upper-intermediate) / B2

リスニング 馴染みのある話題であれば、複雑な議論や講義を理解でき、テレビのニュースや報道番組の大部分を理解できる
リーディング 現代における問題に関する記事や報道内容を理解し、話し手や書き手の特定の態度や視点を把握できる
スピーキング 流暢で自然な会話ができ、馴染みのある状況での議論に積極的に参加し、自分の意見を述べられる
ライティング 幅広い話題について、明確で詳細な文章を書くことができる

CEFRレベル 上級(Advanced) / C1

リスニング 構造が明確でない話し方や、関係性が明示されていない場合でも、長いスピーチや講義を理解できる
リーディング 長く複雑な事実や文学的な文章を理解し、文体の違いを評価できる
スピーキング 流暢で自然な表現ができ、社会的、学術的、職業的な目的で、柔軟かつ効果的に言語を使用できる
ライティング 複雑な主題について、明確で構造的で詳細な文章を書くことができる

CEFRレベル 最上級(Proficiency) / C2

リスニング 生の会話や放送など、どんな種類の話し言葉でも、速いネイティブスピードであっても、理解ができる
リーディング 抽象的で構造的または言語的に複雑なテキストを含む、あらゆる形式の書き言葉を容易に読解できる
スピーキング どんな会話や議論にも難なく参加でき、細かいニュアンスの違いを正確に伝えることができる
ライティング 複雑な主題について、明確で構造的で詳細な文章を、適切な文体で書くことができる

これらの「Can-Do Statements」は、学習者が自身の言語能力を具体的に把握し、目標設定や学習計画の策定に役立てるための有用な指標です。
教育機関や雇用主が言語能力を評価する際の参考としても広く活用されています。

もしあなたが「英語で仕事がしたい」「留学したい」と思っているなら、まずは「その場面で何ができるようになりたいか」を想像してみてください。

たとえば、「英語で会議に参加して発言できる」なら、目指すべきはB2レベル以上。
「専門分野でディスカッションできる」なら、C1以上が求められます。

TOEIC L&Rは主にリスニングとリーディングを測ります。
スピーキングとライティングは、別テスト(TOEIC S&W)でカバーされます。
つまり、CEFRの段階を判断するには、両方の試験を受ける必要があります。
英検は面接まで受ければ、4技能全てをカバーできます。

「聞く・読む・話す・書く」の4技能すべてを含むCEFRは、自分の英語力をより実践的な形で映し出してくれます。

英語試験のスコアはゴールではなく、通過点にすぎません。
本当に大切なのは、「英語を使って何ができるか」。
「何ができるか」を基準にしたとき、CEFRはあなたの進む道を照らしてくれるでしょう。

ただ、先ほども少し説明しましたように、これは「できること」のほんの一部でしかありません。
今後の記事で深掘りしていく予定です。お楽しみに!

参考資料・出典

本記事の内容は、以下の資料を参照・もとに翻訳・再構成しています。

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