#005 レトリックに騙されるな!――「中学英語だけで英語は話せる」の落とし穴

「中学英語だけで英語は話せる」は本当?

「中学英語だけで…」といったフレーズ、YouTubeのサムネイルや広告でよく見かけますよね。
確かに、中学英語の基礎は大切です。

でも、それだけでトラブルに対処したり、人と心を通わせ合ったりできるかというと、現実はそう甘くありません。

基礎的な語彙で話そうとする人でも、学習者が聞いたこともないスラングを使ってきたりもします。
ネイティブの子どもと話したって、そういうことはあり得ます。

そもそも、相手が中学校の教科書に載っているような語彙で、中学の教科書そのままの基礎的な構造のセンテンスだけを使ってくれるなんて事は、あるのでしょうか?

答えは当然、「ノー」です。

英会話力には、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4技能が必要です。
これらをバランスよく習得することで、初めて総合的な運用力がつき、自然な会話が可能になります。


成功者バイアスに注意

「留学経験なしで同時通訳者に」「偏差値35から英検1級取得」「半年でTOEICスコア200点アップ」といった成功談は、多くの人が魅力的に感じますよね。
でも、これらは特定の条件や背景を持つ個人の例であり、すべての学習者に当てはまるわけではありません。

こうしたストーリーは、学習者のコンプレックスを刺激し、現実的な努力やプロセスを軽視させる可能性があります。
もちろん、エンターテイメントとして楽しむのは良いと思いますが、自分も同じようにできると考えるのはあまり得策では無いように思います。


レトリックの罠に気をつけよう

特別な条件を持つ人の成功談でなくても、以下のようなフレーズには注意が必要です。

  • 「留学経験なしでペラペラ」
  • 「短期間の学習で合格/スコア取得」
  • 「中学英語だけでOK」
  • 「純ジャパで高校から直接米国一流大へ」
  • 「聞くだけで上達」

これらは、学習者の不安や願望を利用した、閲覧数や視聴回数稼ぎのマーケティング手法であり、実際の学習プロセスや努力を軽視する傾向があります。

正直、私も何度こういう言葉に惑わされたかわかりません。
自分にも責任はありますが、そのせいで苦しんだり、遠回りしたりした経験もあります。
耳障りの良い言葉で、「やみくも」英語学習に陥らないように気をつけましょう。


文法と発音と語彙と4技能

英語学習にはたくさんの時間と努力が必要です。
まずは基礎的な文法を一通り学び、発音記号を正しく理解し、永遠に終わらない語彙の学習を少しでも進めながら、リスニングとリーディングとスピーキングとライティングの4技能をまんべんなく鍛えていく。
そういう日々の地道な積み重ねが重要です。

また、「#001 自分はどんな学習者?――まず“学び手としての自分”を知ろう」でお話ししましたように、学習者自身のタイプを把握することが大切です。
その上で目的や状況に応じた学習計画を立てることも、効果的な学習への近道となります。


地に足のついた学習が鍵

魅力的なキャッチコピーや成功談に惑わされず、自分自身の学習目的や状況を見極め、現実的な学習計画を立てることが大切です。

キャッチコピーに惹かれる人には、もしかしたら見たくない現実かもしれませんが、英語力は一朝一夕で身につくものではありません。
着実な努力と適切なアプローチによって、確実に成果を得ていきましょう!



次回「#006 語学力が伸びる5つの要素――「興味」「必要性」「時間」「環境」「お金」を見直す」では、語学力を伸ばすのに必要と考えられる5つの要素について書いています。
あなたに足りていないのは、どの要素でしょうか?


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