#001 自分はどんな学習者?――まず“学び手としての自分”を知ろう

学習者の特性

英語を学ぶ手段は今や豊富です。
義務教育が終わってからも、英会話スクール、オンライン英語レッスン、語学アプリ、ランゲージエクスチェンジアプリ、語学留学、海外進学などさまざまな方法があり、それらが「英語学習」として一括りに語られることもしばしばあります。

けれども「学び」という観点に立つと、学習者にはそれぞれ異なる背景や目的、能力があります。
本来は、英語学習にも個人に合った方法や内容が選ばれるべきです。

たとえば高校受験では、偏差値や志望校によって学習の方向性が異なりますよね。
それと同じように、英語学習にも「自分に合った道」があるのではないでしょうか。

英会話スクールでは、レベル別にクラスが分かれていることもありますが、実は“学習者の特性”が見落とされがちです。
そのために、途中でつまずいてしまうこともあります。

これは、良し悪しの問題ではありません。
英語学習の選び方を一度丁寧に考えてみたい。そんな思いからこの記事を書いてみます。


英語学習者のタイプはさまざま

ひとくちに「英語を学ぶ」といっても、学習者の特性は実に多様です。少し考えただけでも、次のような対比が浮かびます。

  • 受験勉強や試験対策が得意な人/苦手な人
  • 人とコミュニケーションをとるのが得意な人/苦手な人
  • 対話の中で学びたい人/一人で集中して学びたい人
  • 英語学習そのものを楽しめる人/英語力を証明手段として必要とする人
  • 学びのブランクがない人/長いブランクがある人

前者がややポジティブに見え、後者がネガティブに映るかもしれませんが、それは単なる印象の問題であり、どちらが優れているという話ではありません。

重要なのは、自分がどのような特徴を持っているのかを、自分自身で意識できているかどうか。
偉そうに聞こえるかもしれませんが、これは私自身がそれに気づかず、遠回りをしてきた後悔から書いています。


【具体例】4人の学習者

ここでは、英語を学びたいと考えている4人の例を紹介します。

Aさん:受験英語が得意で、理工系大学を卒業。現在は昇格試験のためTOEIC高得点を目指している。英語を話す必要はなく、社交的なタイプでもない。15年のブランクあり。

Bさん:学生時代は勉強が好きではなかった。高校を卒業したばかりで、就職を機に英語に興味を持ち始めた。将来は留学やワーキングホリデーにも関心がある。英語の基礎や学習法についてはよくわからない。

Cさん:駐在員の妻で、短大で英語を専攻した経験があり、英語が好き。現在は海外に一時的に滞在しており、語学学校に通う選択肢もあるが、小さな子どもがいるため通学が難しい。買い物の際に店員との会話が思うようにできず困っている。

Dさん:定年退職を機に、若い頃から興味のあった英語を学び始めた。足が悪いため海外に行く予定はないが、英会話スクールに通い、社交も含めて学習を楽しんでいる。

このように、英語学習者とひとことで言っても、一括りにはまったくできません。
にもかかわらず、英語学習に関する情報や「効果的な学び方」が万能のように語られてしまうこともあります。


登山にたとえてみると

英語学習は、登山によくたとえられます。私はこの比喩がとても気に入っていて、よく使います。

なぜなら、それぞれの学習者が目指すゴールも違えば、登る速度も、持っている装備や体力も違うからです。

たとえば…

Aさんは、登山道の途中にある「検定ポイント」でスタンプを押して帰る登山者。頂上を目指しているわけではなく、証明をもらうことが目的。

Bさんは、登山初心者。地図もコンパスも不慣れだけど、山の頂上に憧れを持ち、登り始めたばかりの登山者。靴の履き方や歩き方から少しずつ学びながら、どこまで登れるかはまだ未知数。でも、目はしっかりと上を向いている。

Cさんは、装備も知識もある程度あるけれど、育児という重い荷物を背負っていて身動きが取りにくい登山者。体力や集中力が限られており、気持ちとは裏腹に前に進めない。

Dさんは、山腹ではなく、ふもとの自然の中で森林浴を楽しむ登山者。無理をせず、自分のペースで、学びの時間を持つことと、英語を通じた友達作りが目的。

このように、たった4人の例でも、同じ方法が通用しない可能性があることがわかるのではないでしょうか。皆、同じ英語を頑張りたい人たちですが、立ち位置もアプローチも全く異なります。


今の自分を“把握”することが、最初の一歩

英語学習は、登山と同じで、やみくもに登れば疲れるばかりです。
だからこそ、今の自分の位置を知り、自分に合った装備とペースを見極めることが大切です。

学習スタイルに正解はありません。
けれど、自分の学習タイプに合わないやり方を続けていては、どんなに努力しても前に進みにくくなります。

まずは、自分がどんな学習者なのか、静かに立ち止まって見つめてみましょう。
そうすれば、数ある英語教育法・学習法から本当の意味で自分に必要なものを選び取ることができるはずです。
それが、「やみくもな英語学習」から脱出するための、第一歩になるはずです。



次回「#002 自分に英語を習得するチャンスはどれだけ残されているのか」では、英語を習得するチャンスについて考察しています。
各自に残されたチャンスは、果たしてどのぐらいあるでしょうか?


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